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『たかが世界の終わり』

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グザヴィエ・ドラン監督最新作、『たかが世界の終わり』。

自分の余命が残りわずかであることを伝えるために、別れて12年経つ家族の元に帰る劇作家のルイ。遥かぶりに会う息子のために手料理を振る舞いおしゃれをする母と、幼い頃に別れて以来で楽しみにする妹、そして兄とその嫁。

兄だけはルイが帰ってきたことを良く思わず、家族と楽しく話をしていても茶化したり意地悪を言う。その度に場の空気が険悪になり、家族同士で言い合いとなり怒号が飛び交い、修羅場になる。

そんななかでも、ルイは折を見て話を切り出そうとするが、その度に言い合いが始まり結局そのまま時間が過ぎてしまう。見ている者からは、どのタイミングでどんな風に話を切り出すか、その度に期待をしては挫かれる。きっと家族が分かりあいハッピーなエンディングで幕を引くものと期待をしながら見続ける。しかし、エンディングまでルイは打ち明けられずに終わる。それも、最悪な別れ方で。

どんな家族でも「どんなことでも共感できて、いつでも甘えられて、応援してもらえるもの」ではない。もしもそんな家族がいるならば、とても恵まれていてこの上ない幸せなのだ。この作品は、家族であっても分かり合えずお互いに孤独を抱える、そんな家族を甘やかしたり美化することなく、真っ向から描いた作品。母の「あなたのことは理解できない。でも愛している。」という言葉がすべてを表しているように。愛があるがゆえに悲劇になってしまう。

思いがけないエンディングは後を引き、胸を締め付けられる。そこから目を背けずに正面から描き、見る者からは歓迎されない終わり方に光を当てた、素晴らしい作品。